COLUMN

『DAVID BOWIE is ジョナサン・バーンブルック プレミアム・トークショー』レポート

 

あと3日を残すのみとなったボウイ展の会場を、この展覧会ともデヴィッド・ボウイ自身とも縁の深いひとりの人物が訪れた。2000年代以降のアルバムのアート・ディレクションを担当し、アーティスティック・アドバイザーとしてボウイ展のキュレーターを支え、ベルリン時代にフォーカスしたセクション“The Black And White Years”のヴィジュアル・アイデンティティや、展覧会カタログのデザインを手掛けたジョナサン・バーンブルック。「デザインとは真実の伝達であり、デザインを通じて世界をより良い場所にする」という独自の信条に則って活動する、現代英国を代表するグラフィック・デザイナーだ。DAVID BOWIE is CAFEにて、J-WAVEのナビゲーターなどでお馴染みのサッシャをMCに迎えて行われた彼のトーク・イベント『DAVID BOWIE is ジョナサン・バーンブルック プレミアム・トークショー』には、抽選で選ばれた70名のファンに加えて鋤田正義・高橋靖子両氏も姿を見せ、『ザ・ネクスト・デイ』の衝撃的ジャケットに関わった新旧コラボレーターが一堂に会するという歴史的瞬間ともなった。

 

その『ザ・ネクスト・デイ』のメイキング過程を含め、興味深いエピソードの数々を聞かせてくれたジョナサン。ボウイに匹敵する旺盛なユーモアと朗らかな笑い声の持ち主で、「彼との作業は喜びでしかなく、いつもジョークを言い合っていました」という話にも納得がゆく。もちろん元から大ファンでもあったそうだが、仕事をする上では一定の距離を持つことも必要だと指摘する。「客観性を失うと、素敵なボウイの写真だけのジャケットになってしまいますし、彼の音楽と哲学はそれ以上のものを要求した。殊に『★』みたいな作品の場合、視覚で捉えるひとりの人間としてのボウイと音楽的内容が乖離していましたし、人々が望むものをそのまま与えないのがボウイのエッセンスですからね」。

 


またご存知の通『★』のアートワークには多くの秘密が隠され、種明かしを試みるファンがジョナサンの元に様々なセオリーを寄せているとか。しかし彼の口は堅く、残る秘密を明かすつもりはないという。「僕はただボウイの哲学に倣っているだけなんです。デザインは明確であるべきだと教わりましたが、音楽はその対極にある。だったら音楽のためのデザインが明確な説明をする必要はない――と考えたんです」。よって作品の内容についてボウイと話したこともないそうだ。「一度とある曲の意味を訊ねたら、かなりイラついていましたよ(笑)。彼は字義的なアートワークは望んでいなかった。『★』で重視したのは、音楽が含むエモーショナルな風景です。と同時にアートワークはアルバムを宣伝する目的も備えているため、このジャケットは、ひとつの拡張可能なシステムとしても機能しています。“★”はあらゆるメディアに共通する記号であり、どのコンピューターでも打ち込むことができますよね」。

 

そんな汎用性をさらに推し進めるようにして、彼は生前にボウイの了承を得た上で、『★』まつわるグラフィック一式をクリエイティブ・コモンズに提供。非営利目的なら誰でも使うことができる。従ってこのアートワークは、ボウイのスピリットを受け継ぐようにして未だに世界にインパクトを与えているが、ジョナサンにグラミー賞最優秀レコーディング・パッケージ賞をもたらしたことも、ご承知の通り。授賞式のスピーチでは、1975年にボウイがグラミー賞のプレゼンターを務めた際に口にした、“Ladies and gentlemen, and others(紳士と淑女、そしてその他のみなさん)”という挨拶を引用したそうだ。「彼の言葉は当時、男性でも女性でもなく社会に居場所がなかった人々の心に深く響いたので、寛容さを失ったトランプ政権下のアメリカでも意義があると思ったんです。彼は社会の外側にいる人々の代表者であり続けたので」。

 

そして最後に、「ボウイの最大の魅力とは?」と問われたジョナサンは、多くの人が同意するだろう次のような回答でトークを締め括った。「彼はまずこの世で最もセクシーな生き物であり、過去100年間で最も素晴らしい音楽作品を作った。でもそれ以上に重要なのは、人間が生きる上で抱く複雑な感情を、時に喜びに溢れた、時にメランコリックな表現に転化し、非常に難解な哲学をシンプルな形に落とし込んで、我々が人生について理解を深める手助けをし、安らぎを与えてくれたこと。それを成し遂げた人はボウイのほかにいないと思います」。

 

当日のハイライト映像はコチラをチェック!☞ http://davidbowieis.jp/news/19492/