COLUMN

TVC15〜デヴィッド・ボウイとテレビの関係――テレビの画面越しに聴こえる彼の歌声を辿って。

デヴィッド・ボウイのテレビ初出演が1964年だったことを筆者に教えてくれたのは、ほかでもなくボウイ展だったが、本展ではこれ以外にも、1972年の『トップ・オヴ・ザ・ポップス』や、1979年の『サタデー・ナイト・ライヴ』といったテレビ番組で彼が披露した伝説的パフォーマンスの数々を、当時着用した衣装などと共に観ることができる。これらの綿密に演出された映像は、テレビという媒体が持ち得る影響力をボウイが強く認識していたことを物語っていると言えるのだろう。歌詞をざっと振り返ってみても、“テレビのスイッチを入れてごらん/2チャンネルで彼を見れるかもしれない”と歌った『スターマン』を始め、『5年間』『1984年』『TVC15』『ルッキング・フォー・サテライト』……とテレビが何らかの形で登場する曲が多数見つかる。そして俳優としての彼は1981年に、ベルトルト・ブレヒトの戯曲をBBCがドラマ化した『バール』に主演し(この時の衣装も展示されている)、1993年には同じくBBCのドラマ『The Buddha of Suburbia』の音楽を制作(原作は、ボウイが幼少期を過ごしたブロムリー出身のハニフ・クレイシ著の小説『郊外のブッダ』)。様々な形でテレビに関わっており、面白いところでは、生前最後のテレビ出演作『Extras(邦題:エキストラ:スターに近づけ!)』(2006年)が挙げられるだろうか。ボウイの大ファンを自認し、個人的にも親しかった俳優・脚本家・演出家リッキー・ジャヴェーズの、原案・主演のコメディである。その『Extras』にゲスト出演した彼は、ピアノ弾き語りで、書き下ろしの爆笑パロディソング『Little Fat Man』も演奏。リッキーが歌詞を綴って「『火星の生活』っぽいヤツを頼みます」と作曲を依頼し、「よしきた!」とばかりに快諾して生まれたという珍曲だ。

 

 

ちょうど同じ頃、まさにその『火星の生活』が、30数年ぶりに全英チャートにチャートインしていた。きっかけはやはりBBC放映のテレビ・ドラマ。21世紀から70年代初めにタイムトラベルする刑事が主人公の『Life On Mars(邦題:時空刑事ライフ・オン・マーズ)』だ。ボウイ自身は直接関与していないが、国際エミー賞の最優秀ドラマ・シリーズ賞に2度輝き、大人気を博した同作には『火星の生活』が主題歌として使われたほか、他のボウイの曲を含む70年代の名曲を多数フィーチャー。続いて、80年代に舞台を移した続編『Ashes To Ashes』(2008~2010年)が企画作され、同様に『アッシュズ・トゥ・アッシュズ』ほかポストパンク期の曲の数々を使用。どちらもボウイにまつわるネタを随所に仕込んで、オマージュを捧げていた。

 

 

そんな彼はひとりの視聴者としてもテレビが好きだったらしく、ここ数年では、これまたBBCが現在放映中の『ピーキー・ブラインダーズ』に、かなり惚れ込んでいたそうだ。かねてからオルタナティヴ・ロックを中心とする音楽の使い方に定評があった、第一次大戦後のバーミンガムを舞台とする時代劇で、ボウイは昨年冬に、リリース前のアルバム『★』の音源を制作陣にオファー。残念ながら本人は観ないままに終わったが、表題曲をストーリーに絶妙に織り込んだエピソードが、今年6月に放映されている。また『★』の表題曲と言えば、そもそも昨年10月にお披露目の場を提供したのも、英米合作のドラマ『The Last Panthers』だ。英国人の気鋭の脚本家ジャック・ソーンが手掛けたことで注目を浴びた同作は、90年代と現代を行き来し、紛争中の旧ユーゴスラビアなどヨーロッパ数カ国をまたにかけて展開される非常にダークな物語とあって、曲との相性は申し分なかった。なんでもスタッフが「ボウイの曲が欲しい」との意見で一致し、映像を送ってダメモトで打診してみたところ、ボウイの関心を引き、スウェーデン人の監督ヨハン・レンク(その昔スタッカ・ボー名義で音楽活動を行なっていた)が自ら彼にコンセプトを説明。最終的に、テーマ曲として『★』の別ヴァージョンを用意してくれたという。しかもヨハンとボウイは意気投合し、その後『ラザルス』と『★』のミュージック・ビデオでもコラボすることになる。映像作りにおいても最後まで新しい出会いに刺激を受けていた彼の、尽きせぬ創造欲を示すエピソードのひとつと呼べるんじゃないだろうか?

 

 

このほかボウイとテレビを巡る最近の話題としては、10月にアメリカのケーブル局EPIXで始まったスパイ・ドラマ『Berlin Station』の主題歌に、『アイム・アフレイド・オブ・アメリカンズ』が起用されている。ご存知ブライアン・イーノと共作したアルバム『アースリング』(1997年)の収録曲の、ナイン・インチ・ネイルズがミックスしたヴァージョンだ。パラノイア満々の曲が盛り上げるのは、ベルリンで繰り広げられる、アメリカ政府の暴挙を暴く内部告発者とCIAの駆け引き。かつ、第1話は粋に『Station to Station』と題されていたりもして、どうやら音楽界だけでなくテレビの世界でもボウイのチルドレンが大勢活躍している今日この頃、この先も彼の歌声を様々な文脈で耳にする聴く機会がありそうだ。