COLUMN

越境と変容を繰り返す永遠のアーティスト〜”DAVID BOWIE is” 日本展開催に寄せて

デヴィッド・ボウイ大回顧展『David Bowie is』(ボウイ展)がいよいよ日本にやってくる。2013年ロンドンを皮切りに、ヨーロッパ、北米、オセアニアを巡回し、各地で爆発的な反響を巻き起こしてきたこの展覧会は、単に人気音楽家のメモラビリアを集めただけのものではない。それは音楽のカテゴリーを超え、アート、ファッション、ヴィジュアル、文学、映画、思想、演劇、舞踏、パフォーマンス…と、さまざまなカルチャーの領域を自在に行き来して、時代ごとに斬新で鮮やかな<美>のカタチを提示してきた、真の意味でのアーティスト・ボウイの世界観の全容を、幅広い視野と深い考察、豊富な資料と立体的な構成、画期的な展示法で紹介した、他に類を見ない展覧会なのである。私は幸運にもこの8月、イタリアのボローニャで開催中に、この「ボウイ展」を観ることができた。

 

 

ボウイは1967年6月にファースト・アルバム『David Bowie』をリリースしたものの、1969年に映画『2001年宇宙の旅』にインスパイアされた「Space Oddity」がヒットするまで、鳴かず飛ばずの時期を過ごしている。しかしその雌伏の季節に彼は音楽修行に励むのではなく、リンゼイ・ケンプに弟子入りしてパントマイムを学んだ。そうした発想の柔軟さと自由さはデビュー時から際だっていた。つまり彼は最初からポップ・ミュージックの領域を意識的に踏み越え、拡張しようとしていた。この展覧会は、終生変わることがなかったその挑戦的で冒険的な姿勢とその成果を、驚くべき緻密さと多角的な視点、豊富な資料でもって描き尽くしていく。

 

たとえば1972年。グラム・ロック時代のボウイが英国BBCの人気番組『トップ・オブ・ザ・ポップス』に出演し、「スターマン」を歌った時の映像が、展覧会のいちコーナーを使って流される。映像自体はyoutube等で誰でも見ることができるものだ。だが展覧会ではこの曲が作られ、歌われ、全国放送されたことの意味や背景、彼が伝えようとした言葉、着ていた衣装、テレビの前に釘付けになっていたであろう英国中の子供たちが受け取ったメッセージをも含め、わかりやすく立体的に見せることで、彼がもたらした衝撃の大きさ、文化的/社会的影響力とインスピレーションの強さと深さを鮮やかに伝えてくる。私も含め、多くの日本のファンが彼のことを知るきっかけになったであろうこの名曲を初めて耳にした時の瑞々しい感動が蘇る…というよりは、「その感動は間違っていなかったのだ」と改めて確信させてくれるのだ。これはほんの一例である。そうした遭遇と発見は、展覧会の至るところにあるはずだ。

 

華麗なる変容の王子・ボウイの全貌を、デヴィッド・ボウイ・アーカイヴからセレクトされた300点以上の貴重な品々と、膨大な量のテキスト、映像、音楽でくまなく走査する。その情報量は凄まじく、とても一回では消化しきれない。一度観たら二度、三度と通い詰めたくなる。そんな「ボウイ展」は、いよいよ来年1月、ボウイの誕生日にあわせ、日本に上陸する。

 

Photo credit :© Eikon  G.Perticoni

Text:小野島大